筋力とパワー:筋断面積と筋力,筋の収縮速度,力と速度の関係、筋の収縮様式、関節角度

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レッグプレスマシンでトレーニングする女性


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3 筋力とパワー

3.1 基本的な定義

筋力 Muscler strength とは、ある状態において、1つの筋あるいは筋群が発揮可能な最大の力のことを指す。

パワー Power とは、仕事率のことであり、力に速度を乗じたものに等しい。また、パワーとは、単位時間内に行われ仕事のことである。例えば、100ポンド(約45kg)のウェイトを3フィート(約91cm)持ち上げた場合、仕事は200フットポンドになる。もしそれを2秒間で行ったとしたら、200フットポンド2秒で割って、100フットポンド/秒となる。一般には仕事の単位はワットであり、国際単位に基いてニュートンとメーターに換算することになる。しかし基本的には、パワーは単位時間内に行われた仕事であり、力に速度を乗じた形で表わされる。

回転のパワーは、関節を軸に行う回転運動を思い浮かべると良い。これは、単位時間あたりに行われた仕事であり、トルクに回転運動の角速度を乗じたものである。言い換えれば、どれだけ速くトルクを発揮したかということになる。基本的には、直線運動でも回転運動でも、パワーは力に速度を乗じたものに等しい。

3.2 筋力に関わるバイオメカニクス的な要因

3.2.1 神経系と筋力

1回の筋収縮について、より多くの運動単位 Motor unit を動員すれば、発揮される筋力は増加する。運動単位とは、同じ神経によって支配され、一緒に収縮を起こす筋線維のグループである。したがって脳からの信号がきた場合、収縮するしないにかかわらず、すべてが一緒に活動する。運動単位には様々な種類があり、それぞれ独立してコントロールされているが、一つの運動単位には筋線維タイプのグループが属している。基本的には、一緒に活動する運動単位には、数種類のグループがある。仮に1回の収縮で動員される運動単位が数種類ある場合、発揮筋力の増大に伴い、動員される運動単位の種類も多く、運動神経も太くなっていく。これをサイズの原理と呼ぶ。それほど大きくない筋力を発揮しているときは、小さな運動単位が脳からの信号によって動員される。だんだん発揮する筋力が大きくなると、より多くの運動単位が動員されるようになる。また筋力が大きくなっていくと、運動単位の発火頻度も増加していく。つまり脳が筋を収縮させ続けるために、ますます信号を送り続ける。信号を速く送れば送るほど、発揮される筋力は大きくなっていく。

3.2.2 筋断面積と筋力

他のすべての条件が同じである場合、筋力の差は、筋量よりも筋断面積に関係してくる。例えば、女性でトレーニングを行っている人たちを病院へ連れて行き、MRI(核磁気共鳴画像装置)で実際の筋の断面画像を撮る。それから彼女たちは6ヶ月間トレーニングを行ってもらい、再びMRIの画像を撮影すると、おそらく筋断面積が増えているであろう。一方、トレーニングによる変化を、筋量で測る人たちもいる。容器いっぱいに水を入れ、その中に脚を入れてこぼれた水の量から、筋の量を測る方法である。しかし筋量は、筋断面積とは一致しない。筋力に関してもっとも重要なのは筋断面積である。もしハムストリングスの筋断面積を測ったとしたら、たいていの場合、筋力は筋断面積に比例した値を示す。だから筋力が弱い人は、だいたい筋が小さい。しかし、筋を見かけだけで判断してはいけない。例えば、見かけではかなり太い大腿をもった高齢者のMRI画像を見ると、大腿部位の筋断面積はかなり広いが、外側の5分の1ほどが白く写っており、真ん中の黒い部分は小さく写っている。これは筋断面積が減少し、大腿部位のほとんどが脂肪となっている証拠である。タフト大学医学部のビル・エヴァンズ氏は、こうした研究を数多く行っており、95歳の人でもトレーニング効果がみられたことを報告している。その研究によれば、

  1. 高齢者でも若い人たちと同じように、8~10週間のトレーニングで筋力が約15%増加し、筋断面積も増えている
  2. 彼らの生活がより機能的になった。すなわち、椅子から立ち上がれなかった人が1人で立ち上がれるようになり、階段の昇り降りなど日常生活中の動作が一人でもできるようになった。
  3. 心理面での改善がみられた。つまり自分の身体の状態が良くなったことを自覚し、より適切な能力が身についたと感じている。

これらの3点をトレーニング効果として報告している。

3.2.3 筋線維の配列と筋力

筋線維の配列と筋力

図10に、様々な筋線維の走行方向をもつ代表的な筋を紹介している。左上は放射状筋であり、例としては中殿筋があげられる。左側中段が多腹筋で、腹直筋がその例である。左下は紡錘筋で上腕二頭筋はその例である。右上は鋸筋であり、鋸状の筋線維が斜めに並んでおり、三角筋がその例である。右側中段の羽状筋は羽状に並んだ筋が両側にあるもので、大腿直筋がその例である。右下の半羽状筋は片側だけに羽状の筋があり、後脛骨筋がその例である。羽状に筋線維が並んでいる筋は、短収縮性による素早い運動において大きな力を発揮する。しかし、伸張性筋収縮や等尺性筋収縮によるゆっくりとした運動では筋力を発揮する能力が低いという特徴を持っている。

3.2.4 筋長と筋力

筋は、自然長において最も大きな筋力を発揮し、それより筋が伸ばされたり短くなったりすると筋力は低下する。関節可動域の中で関節の角度が変わることは、筋力を発揮する能力に影響する。例えば、レッグカールを行っている場合、筋力は関節可動域のはじめと終わりで低下する。ウェイトトレーニングマシンによっては、こうした性質を考慮して、動作の後半部分で負荷を軽減させるものもある。ノーチラス社のトレーニンマシンは、特殊な形状のカムの使用によって動作の開始時と終了時の筋力の変化に負荷を対応させようとしたが、実際には、慣性の影響を除くためにゆっくりとした一定速度で動作を行う必要があり、マシンの負荷と筋が発揮する筋力をうまく一致させることは容易ではなかった。多くの場合、動作の終了時に大きな負荷がかかると心地良く感じる。しかし、実際には、動作の終了時に大きな筋力を発揮することはできないのである。

3.2.5 筋の収縮速度と筋力

筋力に関して力-速度の曲線をみると、動作が速くなればなるほど、筋力は低下することがわかる。ゆっくりと動かすときは、大きな筋力を出すことができる。もし見かけ上まったく同じ形態の二人がいたとして、片方の人は速筋線維が多いとすると、その人のほうが速い速度で大きな筋力を発揮することができるであろう。そして、ゆっくりとした速度で出す筋力はほとんど変わらない。この場合、速い速度で大きな筋力を発揮できた人のほうがスプリンターに向いている。速く、瞬発的な動きが必要な運動では、速い速度で大きな筋力を発揮できる人のほうが秀でていることになる。

関節角度と発揮トルクとの関係

図11は、左上のa図が肘関節屈曲、b図が肘関節伸展、c図が膝関節屈曲、d図が膝関節伸展運動で、横軸が関節角度、縦軸が発揮されたトルクである。黒塗りの三角印が等尺性運動 Isometric contraction 、白抜きの三角印が等張性運動 Isotonic contraction 、残りは3種類の速度での等速性運動 Isokinetic contraction を示す。これをみると、運動の速度が速くなるほど、発揮されるトルクが小さくなることがわかる。

3.2.6 関節角度と筋力

図11の曲線を分析することによって、関節角度の影響を調べることができる。例えば、膝関節について下の図を見ると、伸展運動時は(d図)、膝関節の角度が70°あたりで筋力は最大になり、その後、膝を伸展し続けていくと力は落ちていく。これは膝関節屈曲(c図)でもみられ、動作の最後に近づくにつれ、発揮される筋力は減少していく。また、すべての動作において、運動の速度が速くなると、発揮される筋力は低下していく。肘関節と膝関節で違う点は、それぞれの曲線の形が違うところで、これは膝と肘の構造上の差によって生じるものである。

3.2.7 力と速度の関係、筋の収縮様式、関節角度

関節角度と発揮トルクとの関係

図12に力(トルク)と速度(関節角速度)の関係を示した。速度が0の場合は等尺性運動である。そしてコンセントリックで速度を増加していくと、発揮される筋力は減少していく。逆にエキセントリックでは、等尺性筋活動で発揮された力よりも大きな筋力が出る。それは90度/秒程度の速度で最大になり、それより速くなると筋力は低下する。

関節角度、関節角速度、発揮トルクの関係(3次元グラフ)

図13は、筋力を発揮することに関する三次元の関係を示したものである。右下の図からわかるように、筋力の発揮能力は、動作の速度と関節角度の両方に影響を受けるという複雑な関係の中にある。関節の角速度が速くなると、発揮できる筋力は小さくなっていくが、これは関節可動域の中での動作部分と、筋の長さの組み合わせによって決まる。発揮される筋力は、関節角度と関節の角速度、両方の影響によって決定されるのである。

3.2.8 体重と筋力

筋力は、質量に加速度を乗じたものであるため、筋力と体重の比によって身体を加速する能力を知ることができる。これは非常に重要な事である。走ったり跳んだりするときは身体を加速させなければならないスポーツにおいては、体重と筋力の比は非常に重陽な意味を持つ。例えば、短距離走や、跳躍、テニスなどは動きの方向を急激に変えなければならず、体重に対する筋力の比はパフォーマンスに大きな影響を及ぼす。ただし、より大きな筋力があれば、高いパフォーマンスが発揮できるかというと、必ずしもそうではない。なぜなら、筋力が10%増加すると同時に体重が15%増えてしまったら、動きが速くなるどころか遅くなってしまうからである。

ニュートンの第二法則によれば、力は質量☓加速度で表され、加速度は力を質量で割った値で求めることができる。実際に物体を加速させる能力は、力を質量で割った値によって決まってくる。身体を加速させる能力を上げるためには、体重に対する筋力を増やさなければならない。また、筋力を増やしても体重が同時に増えてしまっては意味が無い。

他の要素がすべて同じであったなら、小型のスポーツ選手のほうが大型の選手よりも体重あたりの筋力は大きい。なぜなら、筋の重量はその体積に比例する一方で、筋力は筋断面積に比例するからである。我々は、「体重の何%の負荷が持ち上げられるか」という誤った質問をしてしまうことがある。筋力は筋断面積に比例し、筋の重量はその体積に比例するわけだから、体重に対する何%という考え方は公平ではない。こういう比較をしてしまうと、大きい人は重量当たりの筋力では不利になってしまう。身体の大きさが異なる人たちの能力を公平に比較するために、従来から古典的公式(挙上重量を体重の2/3乗で割る方法)が用いられている。


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