運動器のてこ:レジスタンストレーニングのバイオメカニクス

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ダンベルカールをする女性


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Ⅴ レジスタンストレーニングのバイオメカニクス

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2.3 運動器のてこ

基本的には、筋肉は収縮して骨への付着部を引っ張ることしかできないため、骨格と筋はてこの働きを持っている。腕を動かすために、筋を収縮したい場合は、動作に関係する骨を引っ張ることが必要となる。でこの軸とは、剛体あるいは剛体に近い物体である。我々が力を出す場合、その力の作用に回転軸が関与していないと、せっかく力を発揮しても回転しようとする力が妨げられてしまう。支店とは、てこの回転軸のことである。モーメントアームとは、支点と力の作用線との垂直距離のことである。言い換えれば、あるてこに対して力を出した場合、力の作用線を伸ばしたもの、あるいは力の作用方向に対して平行にまっすぐな線を引き、そこから回転軸に対して垂直線を下ろした距離がモーメントアームである。ペンチを想像するとわかりやすい。ペンチを使う時、モーメントアームはペンチの回転軸とペンチを押す場所のとの距離であり、つまりは、柄の長さがモーメントアームに相当する。

トルクとは、支店を中心として物体が回転しようとする力のことで、力とモーメントアームの長さを乗じた値で表される。例えばトレーンングマシンがあって、おもりはレバーの端にあるとすると、おもりのモーメントアームはおもりから回転軸までの水平距離になる。そして回転軸に力を加える場合、ハンドルの長さが加えられた力のモーメントアームとなる。

てこの例

筋が発揮する力とは、筋の生化学的な活動によって、筋の両端に発揮される収縮力のことである。図1は、左側の黒い丸は、効力である。この場合、加えられた力のモーメントアームは、右側の長いほうになる。支点から黒丸までが、効力のモーメントアームになる。

筋短縮による押す・引く「てこ」の動作

図2は、筋が短縮することによって、引く、あるいは押すという動作が起きて、上腕三頭筋が短縮すると押す動作が起きる。どちらの場合も、筋は短縮しているが、テコの働きによって、引く動作と押す動作の両方を可能にしている。

抗力とは、身体の外部から発生する力のことをいう。例えば、重力や慣性、摩擦など筋が発揮する力に抗する形で作用するものである。

機械的有効性とは、抗力と筋が発揮する力におけるモーメントアームの比を指す。機械的有効性が1より大きいということは、筋が破棄する力が抗力より小さくても、等しいトルクを発生させていることを意味する。機械的有効性が1より小さいことは、一般的に不利な場合をいう。ペンチを使うときのことをもう一度思い浮かべてみよう。ペンチの柄は必ず長いものである。ペンチの先よりも柄のほうがかなり長い。これは、機械的有効性が高い例である。柄の長さと先の長さの比が6対1であれば、機械的有効性も6対1となる。だから柄の先を100ポンド(約45hg)の力でおしているばあいは、ペンチの先には600ポンド(約272kg)の力が発生することになる。これが機械的有効性の基本である。

トレーニンマシンは、このようなテコの作用を利用して、出される力の量を変化させている。例えば、家庭用のトレーニンマシンを使って運動を行う場合、同じ重りを使っていても、異なる径の滑車にケーブルを引っ掛けておもりを持ち上げることによって異なる大きさの負荷をかけることが可能となる。これは、テコの働きを利用した例である。

テコには3つの種類がある。1つは第1のテコ First class lever で、これは支点の両側に筋が発揮する力と抵抗力が作用するものである。これは図1のように重りがある側とは反対に力が加えられて、回転軸がその間にある場合をいう。第1のテコに相当する肘の伸展運動の様子を図3に示した。

第一のテコ。肘伸展運動。

この場合、回転軸は肘関節であり、収縮力を発揮している筋と抗力は、肘関節をはさんで反対側にある。これが第1のテコである。このときの機械的有効性は非常に低い。言い換えれば、筋が力を出している点から回転軸までの長さが、抵抗が加わる点から回転軸までの長さが、抗力が加わる点から回転軸までの長さより短いことを意味する。機械的有効性は、筋が発揮する力のモーメントアームを抗力のモーメントアームで割ったものである。この場合、筋が発揮する力のモーメントアームはたったの5cmであるのに対し、抗力のモーメントアームは40cmである。機械的有効性は、5を40で割った値、すなわち0.125になる。これは非常に機械的有効性が低い状態である。なぜなら、モーメントアームが8倍ということは、もし手で100ポンド(約45kg)の力を出す場合は、上腕三頭筋は8倍の力、800ポンド(約360kg)の力を出さなければならないからである。こういった数字は非常に大きく思えるが、身体の中で発揮される力としては普通の値である。つまり筋や腱をには驚くほど大きな力がかかっているのである。このようなことは、腱の障害や筋断裂が起こりやすい原因でもある。筋や腱は機械的に不利な構造を持っているため、実際に持ち上げているものの重さよりもずっと大きな力を発揮しなければならない。

第2のテコ Second class lever とは、筋が発揮する力のモーメントアームが抗力のモーメントアームよりも長くなっている場合をいう。

第2のテコ。足関節での例。

図4の場合、体重はまっすぐ下向きにかかっていて、回転軸は母趾球になる。体重がかかっている場合は、必ずモーメントアームは水平方向になるからである。この場合、体重のモーメントアームは足関節から母趾球のまでの水平距離である。そしてこのモーメントアームは、下腿三頭筋が力を発揮する踵の腱から母趾球までの距離より短くなっている。これが機械的有効性である。筋の発揮する力のモーメントアームは抗力のモーメントアームより長くなっている。そのために、下腿の筋は体重ほど大きな力を発揮する必要がない。ただ立っているだけの場合は、筋が発揮する力は体重よりも小さい。

第3のテコ Third class lever は、筋が発揮する力と抗力が作用する場所が回転軸に対して同じ側にあり、筋が力を発揮している点が、抗力が作用している点よりも支点に近いところにある場合をいう。このタイプのテコは、身体でもっとも多くみられるものである。

第3のテコ。肘関節例。

図5は第3のテコの例で、回転軸である肘関節に対して筋が力を発揮している点も、抗力が作用している点も右側にある。この場合、抗力のモーメントアームは筋が発揮する力のモーメントアームより長く、力学的に不利な状態である。このように筋は実際に持ち上げているウェイトの重量よりもはるかに大きな力を発揮しているのである。例えば、肘関節から手関節までの距離が18インチ(約45.7cm)で肘関節から腱の停止部まで2インチ(約5cm)だとすると、機械的有効性は1対9になる。つまり、100ポンド(約45kg)のウェイトを持ち上げる場合、上腕二頭筋は900ポンド(約405kg)の力を発揮しなければならない。

腱の起始については、色々な場合があるため、一見持ち上がらなさそうなウェイトが持ち上げられたり、持ち上げられると思ったものが実際は持ちあげられなかったりすることが起こる。その人の身体構造がわからなければ、その人の発揮できる力はわからない。例えば、肘関節から遠いところに腱の起始がある場合、上腕二頭筋のモーメントアームは長くなるから、力学的にはそれほど不利にはならない。この場合、同じ力を筋が発揮すれば、より重いウェイトを持ち上げることができる。関節の中心よりも遠いところに腱の起始部がある場合は、速度は遅くなるけれども、より重いウェイトを持ち上げることができる。

回転軸と腱の距離による、機械的有効性

図6はそのような例を示したものである。膝蓋骨は、大腿四頭筋の機械的有効性を増加させる効果がある。怪我をして膝蓋骨を切除した人は右側の図のようになっている。膝蓋骨がないと、回転軸から腱までの距離が短くなってしまう。こうなると、トルクは距離の比に等しいので、実際に出せる力も小さくなってしまう。

動作中のモーメントアームの変化

図7は、動作中のモーメントアームの変化について示したものである。腕を下におろしているときは、モーメントアームは短い。モーメントアームは、回転軸から筋が力を発揮する点までの水平距離である。そして、前腕を上に持ち上げるにつれて、モーメントアームは長くなり、前腕が床と水平になったところで最大になる。ここがもっとも機械的有効性の大きい位置である。さらに前腕を上に持ち上げていくと、モーメントアームがまた短くなっていく。腕の部位についていえば、動作のちょうど中間点でもっとも大きな力を発揮することができる。これは、腕だけについての話で、身体の他の部位においては、異なる位置で機械的有効性が最大になる。身体の各部位はそれぞれ独自のテコの働きを持っているため、一般論を述べることは難しい。しかし、どのようにモーメントアームが変化し、それが力の発揮に影響するのか一例をあげてみたい。

抗力と抗力のモーメントアームの変化

図8は、どのように抗力と抗力のモーメントアームが変化するのかを示したものである。アームカールを始めると、水平距離は大きくなっていく。つまり抗力が大きくなる。抗力は、力の作用点から回転軸までの垂直距離が大きくなると、これにつれて増大する。水平距離が大きくなると垂直距離も大きくなり、抗力も大きなるのである。前腕が水平な位置にあって更に上へあがっていくと、水平距離は短くなってしまう。これらのことから、アームカールでは、前腕が水平な位置にあるときに抗力が最も大きくなり、上腕二頭筋の機械的有効性もこの位置において最大になる。人の身体は、運動によって力の発揮をうまく調整しており、アームカールの場合、筋肉が力を発揮する能力と運動中に起こる抗力の増減の関係がうまくマッチしているといえる。

腱の付着位置に速度への影響

図9は、アームカールの動作において、腱の付着する位置が動作の速度にどのように影響を及ぼすか示している。図9の右側のように、腱が関節の中心から離れた位置についていると、機械的有効性が大きくなり、左側の図のように腱が関節の中心に近いところに付着している場合がよりも重いウェイトを持ち上げることができる。しかしながら、動作速度について考えてみると、腱が関節の中心に近いところに付着している場合の方が有利に働くことになる。このように、身体各部位の骨の長さや腱の付着部について考慮すると、何らかの要素で有利であることは、同時に他の要素について不利に働いている場合が多く見られる。特定の競技種目における選手の体型が似通ってしまうのはこのような理由によるものかもしれない。


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